自分にできること

兄が帰省した日、
普段まったく料理を作らなくなった母が、
昔取った杵柄のように、包丁を持ち手際よくユウガオの皮をむいていました。
炒め物にしていいよね?と、いつもやっているかのように、
種を取り、さくさくと等分に切っていきます。

毎回不思議なんですが(もう奇跡と言っていい)、
兄が帰ってきてのはじめのご飯の時は、必ず自分から進んで台所に立ち、
お浸しやら、炒め物やら、いろいろと料理を作ろうとするので、
本当にびっくりしてしまいます。
母親としての本能がそうさせるんでしょうね(息子の力もすごい)。

そして今回兄は、約一週間ほどの滞在予定だったのですが、
翌日からはもう東京へ帰ってしまうのではないかという寂しさからか、
「今日、帰るんでしょう?」と毎日繰り返し私に聞く。
という日々も同時にはじまります。

帰ってきたという嬉しさはたったの一日だけで、
翌日から東京へ帰る日までの数日間は、
今度は帰ってしまうことへの寂しさでいっぱいになる・・・
同じ忘れるにしても、毎日が、「あら~今日来たのね!」って、
そっちで繰り返し思ってもらえたらいいのに~って思います。

それくらい母にとっては、
帰ってきたことの喜びよりも、いなくなる方の寂しさが大きいのでしょう。
その気持ちは、残念ながら近くにいる娘(私)では満たすことはできず・・・
でもそれは他人であっても同様に、
自分の気持ちを誰かに満たしてもらう、
ということはそもそもできないんだなあと感じます。

いろいろな感情を、自分一人で背負い、
またそれを慰め、癒す時も自分一人なのだと思う。
だから、母の生きることへの大変さや寂しさや不安といったものも、
どんなに親孝行して私が補いたいと思っても、
それはできないことなのかもしれません。

私にできることなど、
日常のほんの些細なところのお世話だけです。
自分が育ててもらった分、自分が病気をして心配をいっぱいかけた分、
せめてそれらの分だけでも、母が生きている間に返していきたい。

でも、たぶんそれでも足りないんだろうな・・・

たくさんの愛情をもらっている分のお返しが、
まだまだ足りない気がします。


虹が・・・消える前に 間に合った~



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