気遣いか、プライドか?

父の暮らしているホームも、やっと家族訪問が解禁になりました。
約2か月ぶりで会った父は、また少し歳をとったような感じがしました。

手を握ると、そのままわたしが離さなければずーっと握ったままでいます。
その手はいつも冷たいので、しばらくさすってあげるのですが、
ついでにポロシャツのめくれた襟を整えたり、髪の毛を整えたり、伸びた眉毛も鼻毛も気になって切ってあげたり、
といろいろやっていると、だんだんうっとおしくなってくるのか、わずかに表情が固まってきます。
その固まった表情を見ていると(機嫌を悪くする一歩手前という感じ)、
あ~まだそこまで手をかけられたくないというプライドのようなものが残っているのかなあって、
妙にほっとしたりします。

わたしは小さいころから、この歳になるまで家族、親戚から『まーちゃん』と呼ばれているのですが、
もう久しく父から、そう呼ばれたことがありません。
一年くらい前までは、呼んでいたように思うけれど、ホームの職員さんがいくら「娘さんの名前なんだっけ?」と言ってくれても、
笑っているだけ(一応わからないことを、ごまかしているつもりか)。
そしてわたしも、父がわたしのことを娘だとわからなくなってしまった、とはまだ認めたくない・・・。
だから、今日はわからなかったけど、今度来たときは思い出してくれるかもしれないって毎回思ってしまいます。

でも、父は気遣いがあって優しい人なので、きっとわからないとは言わないんじゃないかと思います。
誰なのかも、名前も、全部忘れてしまったことを、
父なりに、はっきり相手にわからせてはいけないと思っているような気がします(それは失礼にあたると思っているというか)。
もしかしたら、目の前にいるこの人たち(わたしと母)を傷つけてしまうのではないかと思っているかもしれないし、
わからないっていうのがバレるとかっこ悪いと思っているかもしれないし(まだ少しプライドありそうだから)、
それとも、本当はわかっているけれど、それを地球人の言葉ではもう話せなくなっているのかもしれません。

理由はともあれ・・・
生きていてくれるだけでいい。
家族のことを忘れても、父の世界の中でおだやかに過ごしてもらえたら、それが一番だと思っています。

言葉が交わせなくなったことは、とても寂しい。
でも、
「ありがとう」も「お父さんの娘で幸せだよ」もいっぱい言って、
わたしはこれからも地球語ですけど、いろんな話をしていこうって思っています。











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