一期一会

仕事でお世話になった方と、突然のお別れがありました。

その方のお話は、いつも無駄がなく、的確で、質問してくる内容にするどさがありました。
こちらも、うっかり曖昧なことは言えないと、
事前の準備や質問されたことの意図がズレないように聞き取ることに集中。
そんな緊張感がありました。
かといって、完璧な感じへのプレッシャーは不思議になく、
それは、時々垣間見える、
シャイで、好奇心いっぱいの少年のような表情にあったのかもしれません。
いつも忙しそうで、早口で(歩くのも早かった)、
エレベーターの前で出迎え、エレベータのドアが閉まるまで頭を深く下げて見送る・・・
そんな礼儀正しい方でした。

いつもその方とお会いするときは、一人で訪問するということがないのですが、
最後にお会いしたとき、たまたま自分一人で、要件も早めに終わったのでした。
それから、お互いにちょっとひと休み~という雰囲気で、
その方は椅子の背もたれに寄りかかり、くつろぐような体勢に。
今の仕事に関わる話の中に、その方の個人的な気持ちや、
その気持ちをどんどん話しながら、何かおもしろがっているような感じが見えました。
私も可笑しくて、本音を伝えると、
「あ、やっぱりそうですか~」とまた笑って、さらにリラックスした体勢になり、
気づいたら、30分近くもおしゃべりしていたのでした。

一年ほどのおつきあいの中で初めてでした。
こんな風に無邪気にふざける人なんだあ、とすごく人間味があって、
この方と仕事をさせてもらえる幸せを感じました。

そんな矢先だったので、
もう会えないということがすごく悲しいです。

私はあのとき気になったことがありました。
時々、額に汗をかいている方ではあったのですが、
その日は汗が止まることなく、何度もハンカチで汗をぬぐうほどで、
それがとても気になったのですが、
「大丈夫ですか」と言えませんでした。
私はそのことに触れるのが何か失礼かなと思ってしまっていました。

「大丈夫ですか。ちゃんとお休みとっていますか。」
と言えばよかった。
「何かあったら、私に話してください。」
とまでは、さすがにあのときの私には言えなかったと思いますが、
でも、こんなことになるのならば、そう思った自分の気持ちを伝えればよかった・・・
自分自身に、とても後悔しています。

その時思ったことを、相手に伝えることをためらうとき、
状況にもよるのでしょうが、パターンがそう思っているだけのことがあります。
こんなこと言ったら、どう思われるかな。
気にしていない自分を見せたほうがいいかな。
仕事なんだから、表面的でいいんじゃないの。
そんなことが頭をよぎり、それの積み重ねでますます本当の「私」でいることを
つかう場面を制限していないか。

年老いた両親のことは、お別れのときが来ても後悔しないようにって、
思いを伝えること、普段から意識しているように思います。
でも、身近な人(特にまだ若い人)が、突然会えなくなってしまうことは
想像できずに日々過ごしていたんだと思いました。
万全にはできないかもしれませんが、
やっぱり、一期一会なんだよ、ということをその方は教えてくれました。

ご冥福を心よりお祈りしております。
本当に今まで、ありがとうございました。






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