心が喜ぶもの

わたしのはまっているものを先日ご紹介しましたが、
今日は気がついたら生活の中にとけこんでいたといったらいいか、
そうなるほどに大好きなもの、リネン(麻)のお話になります。
あの、しゃきっとしたハリのある感触や、使っていくうちにくたっと、しわしわっと柔らかくなっていく変化。
でもまた洗うと、しゃきっと元に戻るところは(まるで、何事もなかったように平然を装う感じ)、
とても愛着を感じてしまいます。

リネンの服をはじめて着たときは、
あっという間にしわがついてしまって、なんとも残念な生地だなあと思いました。
夕方には一面に広がってしまうしわしわ感。
でも着ているうちに、
なんだかそれはそれで味が出ている感、しわ一つない洋服よりも魅力的に感じる感、
はたまた今日一日くたくたになるまで頑張った自分と重なる感・・・
というように、布と自分が一体となっているような不思議な感覚にすっかり魅了されてしまいました。

植物から繊維を取り出し、手間ひまかけて糸にし織りあげられた生地は、
麻独特の風合いと感触、静電気もおきず、肌へのストレスもなく、軽くてとても楽なのです。
光沢があってちょっとフォーマルな感じのものや、シルクのようなやさしい肌障りのものもあります。
服と体のあいだに空気が入り、体型をひろわず、
年齢を重ねても安心して着られることも良いなあと思います(ここポイント高い)。

自分にしかない、自分が好きと思える、魂が喜んでいるようなこういう感じって、
はたから見てちょっと変わっているようにも見えるかもしれません。
自分自身もこれじゃなきゃいやだという正直さが、よくないこだわりとか、
一種の偏りではないのかと、戸惑うこともありました。

それが、なんと先日見たTVで、
好みが偏ろうとなんだろうと『自分の好き』を信じて、生活にも仕事としても突き詰めている方がいて、
ああ、これでいいんだ!と勇気がわきました。
空間コーディネーターの石村由紀子さんという方です。
奈良で約40年「くるみの木」というカフェを営み、
暮らし(衣食住)の心地良い空間を提案し続けてきた方です。
石村さんの布使いはとても見事で、
そこには小さいころ祖母から教わったものが大きく影響しているとのことでした。

ーーーなんでもきれいなものを見たら目が喜び、目が喜んだら心も喜ぶーーー
どうしたら自分が、そこにいるみんなが喜ぶような、きれいな、ほっとするような空間を作れるのか。
そこだけを素直に問いかけ、向き合い続けてきた方なのでした。

そんな石村さんも、麻が大好きということ。
しゃきっとした感じから、使ってしわしわになり、また成形される感じを、
「あの潔さ(いさぎよさ)が好き」
と表現しておりました。
これです、これ。ここが同じだったのです。
麻の持つ良さもそうでないところもすべてあっての好き、という気持ちを、
これほどぴったり表現した言葉を使って堂々と話している姿に、心がふるえました。

麻の使い方も本当にいろいろで、特に印象的だったのは、
ただ一枚の大判の布を蚊帳のように目隠しのように、また、風にゆられて夏の涼を感じられるようにと、
ご自宅のベランダに、上の方から二つ折りにかけているリネンの生地。
布一枚で外と中を一体化させるような心地良い空間を生み出しているところが、本当に素晴らしい感性だなあと思います。
石村さんはリネンではなく、麻と言っているところがまた昔ながらの生地を大切にしている感じがして、
布との時間をいろいろな使い方を通して築き、暮らしてきたんだなあと思いました。

自分を楽にしてくれるもの、疲れをとって癒してくれるもの、気持ち良くしてくれるもの、
そういうものが身近な生活の中にあるんですね。
忙しくしているときは頭がいつも働いていて、情報としてそこを探してしまったりするので、
本当に自分の自然な感性でそうしているかどうか、気がつきにくいものです。
頭を空っぽにして、自然に目がいくもの、触れたくなるもの、行きたくなるところ、動きたくなるもの、
そういうものをされるがままにやってみるということは、日常で大事にしていきたいです。

自然素材の布ものには、自分にはとてもほっとするものがあって、
地球の贈り物をいただいているような喜びがそこにあるように思います。
掛けたり、敷いたり、包んだり、まとったり、ふれていたり、ただ見とれていたり・・・
そこにいろんなデザインや色や形があって、楽しさ、うれしさ、元気、平和、幸せ、健やかさ、大らかさ、希望、安心、もあります。
どんどん好きなものに囲まれて、自分が喜ぶことをしながら暮らしていきたい。


























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