年季の入った夫婦

先日、しばらくぶりに父と会って来ました。
もう一年くらい前からでしょうか、
私のことが分からなくなっているような感じがあり・・・
それを実感するのがちょっと悲しくて、
父には会いたいけれど、会いたくないような複雑な気持ちになり、
しばらくホームへの足が遠のいてしまったことがありました。

毎回、どなたですか?的な顔をされると、
私も慣れてきたようでいて、まだやっぱり慣れないです。
(今日は、調子が悪かっただけなんだと思いたい)

でも今回は、母を一緒に連れて行ったので、少しだけ期待がありました。
いかにも、母娘で来ました!私はあなたの娘ですよ~
という雰囲気を見た目で出してみたのです。
すると母は、それでも私にピンときていない様子の父に向かって、
「ほら、まーちゃんでしょ!わかるでしょ」と、
こちらが思う以上に父に気合をいれます。

妻ってすごい・・・
夫の今の状態がどうであろうと、
夫婦の力関係って不動なんですかね。
父は母の言葉に押されて、
わかったふりをしているような感じになって、とりあえずうなづいていました。

絶対、わかっていない・・・
お父さん、いいよ、無理しなくて・・・
と思う私のそばで、まだ母は容赦なく父にげきを飛ばす。

そんな年季の入った夫婦の姿を見ていると、
逆に父を励ましてあげたくなりました。
一緒に暮らしていたころの、
母の強引さにいつも負ける(負けてあげる)優しい父が今もここにいます。

父が自分を見ても名前を言わなくなったり、
顔をじーっと見た後にそっぽを向いたり、
いろいろショックにはショックだったのですが、
それでも思ったよりは、自分自身がこういう事態によく適応しているなと感じます。
もっと、泣き狂うとか、現実が受け入れられないかと思っていましたが、
そうでもなかったです。
これは、今までもうたくさんパターンへの語りかけをしてきた賜物だと思いました。

父は、歯が結構無くなってしまったので(年を取ると歯って抜けるんですね)、
あまり食べれなくなったということもあり、
しばらく見ないうちにまた痩せて小さくなっていました。
でも、それ以外は、顔色はとてもよく、心は穏やかそうに見えました。
そして、何と表現したらいいのか・・・
とても幸せそうな、仏様のような顔をしているなあと(耳たぶもでかいし)。

手をにぎると、
私の手がとても温かったからなのか、
びっくりしたような顔をしてうれしそうに笑っていました。

毎回、確実に父に会うと、いい気持ちになります。
癒されるような元気になるような、
本当に何の言葉もなくても、何かとても大事なことを思い出すような、
大きな愛を受け取ってくるような気がします。
私も大きな愛を返せているといいなあ。







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