絆創膏日記
絆創膏日記 東田直樹著
東田さんは、重度の自閉症です。
言葉がほとんど話せませんし、
動きも衝動的で誰が見ても障害者なんだなあとわかります。
でも、パソコンのキーボードを前にすると、
別人のようにコミュニケーションがとれる、普通の青年であることがわかります。
普通どころか、その文章を読めば、
いつも好奇心にあふれ、想像力にあふれ、
心がとても豊かな人であることがわかります。
自閉症なために、思いとは裏腹の行動を取ってしまう自分自身のことを
よく観察しています。
その描写が、おもしろくもあり、せつなくもあり。
見た目の行動からは、まさかそんなことを考えているなんて!
と思うような優しい心がそこにあり、
私はテレビのドキュメンタリー番組で東田さんを知り、
障害者(特に重度の方)を見る目が変わってしまいました。
みんなが皆、そうではないにせよ、
少なくとも言葉が出ない、言葉が使えない人であればあるほど、
自分を観察する目はするどいのではないかと思います。
本の中で、東田さんは、
自分が嫌になるような失敗を何度も繰り返してきたといい、
そういうとき、立ち直るときにやることは一つ。
『落ち込む自分を見放さないこと』
と言っています。
そして、
本当の孤独とは、自分で自分を見捨てることではないのか。
真っ暗な闇の中で、ずっと下を向き、感情にふたをして、
生きていることそのものを否定し続けるようになれば、
そこに未来という言葉は存在しないだろう。
自分で自分を見放しては、立ち直るきっかけさえつかめなくなる。
自分を許すことの出来る人は、気持ちの強い人だ。
〜(本文より)〜
自分ではどうすることもできない、
勝手に動く自分の体。
勝手に発してしまう幼児のような奇声。
自分に話しかけてくる人に顔を向けられない失礼な態度。
それらを『失敗』として認識し落ち込み、
しぼんでしまった心を自分で抱きしめ、大丈夫だよと話しかけ、少しだけ泣く。
そうやって、自分の心に新しい空気を送ってあげるのだそうです。
本当にそう!
誰かに元気にしてもらう必要はないんですね。
自分で自分をひとりぼっちにしている。
パターンに、ひとりぼっちにさせてごめんね、って語りかけるのは、
「私」がついているから、もう大丈夫だよ!といってあげることが、
一番自分を立ち上がらせ、元気にしてくれることだとわかっているからです。
心に新鮮な空気を送ってあげる。
っていいですね。
この本、会社で買ってもらったものです(職場の図書コーナーに今はある)。
毎月社員が一人一冊、自分が読みたい本を買ってもらい、
その代わりみんなが買った本の中から気になったものを読んで感想を書くという、
ルール(業務?)に、本を楽しむ余裕がなくなっていた私。
それが、初めてでした、自分だけでなく、
ほかの誰にでも読んでもらいたいなあと思える本を選べたのは!笑。
人の出会いもそうですが、
たった一冊の本から、日常の見え方が変わることがあります。
肩の力を抜きたいとき、ちょっと落ち込んだとき、優しい気持ちになりたいとき、
ぜひおすすめです。
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